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インタビュー

株式会社ユニークワン 立川和行さん|IT化の遅れる地方には「Web」の力が必要。“起業する気はなかった”けど会社を立ち上げた先に見える地方の未来

2022.08.07

| Interviewee |

株式会社ユニークワン

立川和行(たちかわ かずゆき)
新潟市(旧中蒲原郡横越村)で、農家の長男として生まれる。高校卒業後は慶應義塾大学へ 進学し、卒業後は通信キャリア大手の株式会社NTTドコモに就職。支店勤務の後に本社経営企画部へ異動し、経営指標の制度設計やリブランディングのプロジェクトに携わる。10年間勤務ののち、新潟へUターンを決め、実家である農業法人「カガヤキ農園」へ。インターネット販売の強化や社内業務のシステム化など、農業のIT化に取り組むも、同時に地方全体のIT化の遅れに危機感を感じ、2014年にインターネット広告会社「ユニークワン」を創業。現在はWeb マーケティング支援とメディア運営を中心に、新潟から全国・海外へサービスを展開し、地方のIT化のリーディングカンパニーを目指す。

帰郷で直面した地方のIT化の遅れ。大企業の経営企画部門から転じ、新潟で未知なる起業の道へ

ー 新潟にUターンした当初は、起業するつもりはなかったと聞いて驚きました。

まさか自分が起業するなんて、思いもしなかったですね。農家育ちで自営業の家系ではあったんですが、祖父から父に代替わりした時、父が同業の仲間5人と農業法人を立ち上げたんです。でもこれがうまくいかなくて、仲違いしちゃったんですよ。さらに、経営者として人を雇っているんで、社員に還元するボーナスの時期が来ると、立川家の食卓はふりかけご飯のみになったり(笑)

そんな風に過ごしてきたので、起業へのポジティブなイメージがなくて「絶対に東京のサラリーマンになってやる」と反発心の中で将来を描いていました。

念願が叶い、大学卒業後はNTTドコモに就職して、入社4年目から経営企画部門に配属になりました。この時に、経営について色々勉強したんです。周りはエリートばかりだったんで、休日返上でとにかく勉強しました。

そんな時にふと「あれ?こんなに勉強してるけど、俺っていつ経営するんだろう?」と思って。ここで改めて”親父の会社”に興味を持ち始めました。ちょうど転職も考えていた時期でしたが、独身だし、首都圏での生活にも飽きてきたので、実家に戻って働くことに決めました。

入社後は、販売部門でインターネット販売の強化や社内のシステム化を担当したんですけど、そこで驚いたのが、地方のITリテラシーの低さ。

自社のIT化を進めるために発注先を探すんですけど、頼めるところがなくて。学生時代にWeb制作のアルバイトをしていたので「自分の方が理解しているかも……」とすら思い、この状況は変えなければいけないと感じました。

実家は実家で、父はまだまだ現役。会社も順調に成長していたので、自分が経営に回るとしても随分先になるだろうなと思い、順番を待つくらいならやってみるかと起業することに決めたんです。「うまくいかなければ一年で辞める」というカジュアルな気持ちでスタートしました。

Web広告×メディア運営。月間300万PVを誇るコンテンツづくりのノウハウをお客様へ還元

ー 起業当初は、どのようにサービスを展開していったのでしょうか?

当初から軸は変わらず、インターネット広告運用とメディア運営です。インターネット広告は、自分がUターンをして相談できる企業がなかったので、これは需要のあるサービスだと思いました。

また、今ですら会社の看板となった地域情報サイト「にいがた通信」ですが、実は起業前から徐々に動いていました。インターネット広告を事業にするとはいえ、実績のない会社に依頼するのは誰でも不安ですよね。

なので、自分がプレイヤーとなって成功事例を作り、お客様にノウハウを還元していこうと思ってメディアを立ち上げたんです。

ガタ子さんでおなじみ、新潟県新潟市の地域情報サイト「にいがた通信」

https://gata21.jp/

広告代理店をやっていながらこんなこと言うのも何ですが、広告運用の代理業だけではいずれ行き詰まるとも思って。広告とメディアに軸を持つことに決めました。

ー 「にいがた通信」は、月間300万PV以上を誇る県内屈指のWebメディアに成長しましたね。

最初は「にいがた通信」の運営元がユニークワンだということは、声を大にして言ってはいなかったんです。「ガタ子は本当にいるの!?」「一人なの!?」と話題性が生まれるのを狙っていました。

その後メディアが伸び、広告掲載やタイアップ記事などを始めた時期からオープンにしていますね。

また、皆さん気になるところかもしれませんが、時代とは逆行しているようなサイトのデザインも実は考えて作ったものです。メディア立ち上げ時、競合となるIT企業を調べた際にビジュアル重視の会社が多かったので真逆をいこうと思いました。

ー「にいがた通信」のスキームは、県外だけでなく海外にも展開していますよね。

国内は全国津々浦々まで広げられると思っていて、半年で10ヶ所のペースで展開しています。海外は、昨年末に韓国のソウル市にて「中区通信」をリリースし、近いうちに韓国2拠点目を立ち上げる予定です。台湾・香港・シンガポール、あとはアメリカなどアジア圏以外もやってみたいと思っているんです。

お客様からも「メディア運営をしたい」とご相談をいただくことがあるんですが、まずは自社での展開に注力しています。理由としては、メディア運営は2年以上の長期目線で動かなければいけないですし、戦略を立てて一から作ると予算も大きくなるので。

広告はすぐに成果に繋がるんですが、メディアは長い目で育てなければいけないので、サービスとして展開するにはもう少し課題を整理したいですね。

でも改めて思うのは、メディアを運営するって楽しいです。これからも会社の主軸として伸ばしていきます。

ー現在、注力している事業についても教えてください。

システム開発に力を入れています。SNS分析ツール「ooowl(オウル)」など、お客様自身が運用する際に使える独自のサービスを作っています。

また、コロナ禍でオンラインセミナーの開催や自社サイトのコラム記事にリソースをさいて、Web経由の集客に力を入れましたね。

最近でいうと、Googleアナリティクス 4プロパティ(GA4)の導入に関するセミナーは反響がかなり大きいです。

自社サイトのページビュー(PV)数も順調に伸びていて、今では月間20万PVほど。2020年から力を入れ始めたコラムからの流入がほとんどですね。

ユニークワン自社サイトコラムページ

https://unique1.co.jp/column/

今は新規のお問い合わせは県外が7割以上で、一日二桁ベースでお問合せをいただいています。売上も県外比率が上がっていて、今後も伸びていく見込みです。

ーお話を聞いていると、対お客様であれ自社であれ、サイトトップにある「成果を追求する」をとことん実践している印象です。

コンテンツマーケティングや、戦略づくりは私たちの強みだと思いますね。

広告でもメディアでも、伝えるべきユーザーに届けるという部分は自信があります。

Web経由の集客に関しては日々研究中で、リードジェネレーション(※)は常にテストをしています。私たちは、テレアポのようなプッシュ型の営業は基本してこなかったんです。「Webマーケティングの会社が電話営業ってどうなの?」と疑問もあったので。

(※)マーケティング活動によって、将来のお客様(見込み顧客)を獲得するための取り組み

でも最近、例えば3回セミナーに参加してくれた方には、こちらからアクションするなど、色々と試みています。

集客と営業は、どちらも非常に大事。集客したら、その中できちんと営業活動も行う。これまで待ちの姿勢だった部分を見直して、しっかりとクロージングしていくのもマーケティング活動で重要だと思っています。

ー事業と共に会社の規模も拡大し、2022年度からは新卒採用も始めていますね。

社内の環境やルールが整ってきたので、新卒採用も始めました。

評価制度や社内のルール作りって、難しい上に中途半端にもできないので苦労はしましたね。

外部サービスなど導入しては検証し、ようやくフィットする形になってきました。

今は約40名が働いていますが、人間性重視で採用を行っています。少し前までは、スキル重視で採用していたんですけど、私自身、考え方が180度変わりました。スキルが高くても社内がギスギスしていたら一番良くない。選考段階で人柄を見て、信頼できる人を採用することにしています。

関連記事:社長は面接しない!?ユニークワンにおける採用の「これから」について社長に聞いてみた

https://note.unique1.co.jp/n/nc98fca5d5cfb

あとは組織サーベイの実施や、定期的に行う1on1や人事インタビューでメンバーや組織の状態を知っておくことは大切にしていますね。

ー採用関連といえば、Twitterでの発信もその一環でしょうか?

そうですね。私は採用目的で発信しています。

2020年6月あたりから、全社でTwitterでの発信を強化しようという話になりました。
各々が個性豊かに発信していますし、メンバーにフォロワー数を越されていたりもします(笑)

会社では、意識的にコミュニケーションを取りすぎないように、程よい距離感を大切にしているんですが、Twitterやnoteで発信をしていれば、社内・社外に思いや考えを伝えられるので、そう言った意味でもSNSは便利ですね。

媒体の色に合わせ、結果から逆算して実行。お客様のメディアだからこそ「自分ごと化してもらう」

ー 仕事に対するこだわりを教えていただきたいです。

インターネット広告においては「村の空気を乱さない」ことを大事にしています。

SNSであれば、Twitter・Instagramそれぞれカルチャーがあるし、YouTube広告には、テレビCMとは違うアプローチの仕方がある。手間をかければ正義というわけでもなく、エンゲージメントを高めるには、その媒体の空気を掴むことが大事です。

バナーを単体でデザインするのではなく、媒体に表示されている状態から逆算して考えることが大事ですね。

「にいがた通信」においても同じことが言えます。お客様とタイアップする記事体広告があるんですが、ここに載せるのであれば、とことんガタ子目線で紹介をします。
「これは、砕けすぎでは?」とお客様と揉めることもあるんですけど(笑)「にいがた通信」の世界観は崩しません。これはユーザーのニーズを捉えている私たちがこだわるべき部分なのです。

広告もメディアも点はなく、コンテクストで面白さを見せることを大切にしています。

もう一つは、予想外の動きにもこだわっているかな、と。例えば韓国で地域情報メディアを始めるとか。王道を進んでいるようで、外すみたいなことは面白がってやっています。

普通のことをやったってつまらない。広告も印象に残らないと意味がないですし、ユーザーに刺さらないと意味がないので。

巷で言われてる正解が不正解のこともあるし、常識が邪魔をしてることって実は多いと思っています。大前提のルールは守りながらも、どう応用するか・崩すかみたいなところも戦略的に考えている部分ですね。

ーお客様とのコミュニケーションにおけるポイントも気になります。

「とにかくこのサイトを真似てほしい」。そんな依頼をいただくこともあるんですけど、全く別業界の事例だったりするので、本来の目的を見失ってしまわないように私たちがサポートすることを心がけています。

また、4マスと言われるテレビ、ラジオ、新聞、雑誌の広告と違い、SNS広告は私たちがいくら運用代行したとしても、結局はお客様が看板を持つメディアなんです。

情報発信の責任・クリエイティブの責任はお客様が持っているという自覚は持ってもらうようにしています。自分ごととして認識してもらいながらも、私たちがプロとして成果を追求していく。この前提は崩さないようにしていますね。

地方に固執しない。全国・世界へ挑んだ先でしか実現できない新潟への貢献があるから

ー 立川さんが新潟に戻った頃と比べて、新潟におけるITの状況は変わりましたか?

当時と比べたら、新潟のデジタルの動きはかなり変わりました。少なからず、新型コロナウイルスの影響も大きいですね。

IT関連のベンチャー企業も続々と増えていますし、先輩IT企業もサービス形態を変えたりと、活発な動きを感じます。お客様のインターネット広告に対する意識も、大きく変化していますね。

ー 新潟のクリエイティブを盛り上げるため、ユニークワンとしてやっていきたいことはありますか?

”新潟”というワードに執着はしていないんです。どちらかというと「全国・海外で知られるユニークワンが、実は新潟にある」というようなイメージを目指しています。
「ユニクロ」で名を馳せるファーストリテイリングさんの本社が山口県にあるイメージに近いでしょうか。

外へ外へと事業を拡大していくけれど、地域には間違いなく貢献してるという形が理想。

いつかは私たちの運営している全メディアを経由して、世界各地から人を呼び込み、新潟をパンクさせたいと夢見ていますし、街のブランド力を上げる会社にしたいです。

新潟から飛び出して成功事例を作れば、きっと後に続く企業も増えてくると思うんです。100m走10秒切る選手が出た途端、後から次々と増えてくるように。

「地方にいても本気で取り組めばハンデになることはない」ことは、過去の経験からわかっているので、地区予選で満足したくないんです。勝負はできると確信しています。

最近はDXがトレンドワードになっていて、行政やマスメディアもITに注目するようになっていますね。
企業単体ではなく、全体で盛り上げていける雰囲気が生まれているのは、確実にこれまでと異なる流れです。

世の中にITの追い風が吹く中、私たちはその中核を担えるように今後も地域を飛び出して挑戦し続けていきます。

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