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インタビュー

株式会社フレーム 石川竜太さん|デザインの本質はアウトプットにあらず。お客様の”想い”を具現化し価値づくりにも寄与する、デザインへのこだわり

2023.06.07

| Interviewee |

株式会社フレーム

※CI(コーポレート・アイデンティティ):企業のアイデンティティを表現する統一されたコミュニケーションの要素。ロゴやカラー、フォントなどが含まれる。
VI(ビジュアル・アイデンティティ):企業のブランドイメージを視覚的に表現するためのデザイン要素。ロゴやカラー、フォントなどに重点が置かれる。

石川 竜太(いしかわ りゅうた)

1976年生まれ。株式会社フレーム代表。デザインをより身近なモノに感じてほしい。そして、デザインをビジネスにしっかり役立てたいという想いで、枠組みからクライアントの課題解決に取り組み、ブランディング、CI・VI計画、パッケージデザインなどを多く手がける。企業向けワークショップであるクリエイティブコンサル事業なども行う。主な受賞歴:JAGDA賞、日本パッケージデザイン大賞、日本タイポグラフィ年鑑、Pentawards、NYADC、German Design Award、A’Design Awardなど。

「枠組み全体を作る」。その信念が突き動かした毎日のロゴ作り

ー デザイナーとしてのファーストキャリアは燕市の印刷会社だとお聞きしました。その後、新潟市へ転居し有限会社インテグレード・グラフィックスに転職。グラフィックデザイナーとして主に広告デザインなどのお仕事をされていたようですが、非常にお忙しい毎日を送られていたそうですね。当時の心境はいかがでしたか?

インテグレート・グラフィックスは、東京の主要テレビ局の仕事など県外の大きな仕事を担当させていただくこともあり、新潟でトップクラスに勢いのあるデザイン会社だったと思います。本当にハイレベルな現場で、さまざまな経験をさせていただきました。

忙しくもやりがいのあるお仕事をさせていただいておりましたが、入社してから5年ほど経つと、いつの間にか代表の関谷さんに続いて2番手のポジションに。強いプレッシャーを感じる日々でした。その結果、少し思考が沈んでしまって。次の仕事も決まっていませんでしたが、今の状況から抜け出したくて、ある日関谷さんに「会社を辞めたいです。」と伝えました。そうしたら、関谷さんから「辞めてどうするの?」と。

そのとき、初めて「自分ができること」についてじっくり考えたんです。そうしたら、依頼してくださっているお客様の想いを形にできるデザインという仕事にきちんとやりがいを持って働いていることに気がつきました。

デザインの仕事は続けたいと思い直しましたが、このままの環境では続けられないだろうと。しかし、独立するにはまだ力が足りない。また、当時の新潟のデザイン業界の中ではトップクラスの経験をさせていただける環境などを踏まえ、このまま会社を離れるのは得策ではないという考えに至って。そこで、環境はそのままに、目標を「独立」と設定し、気持ちの上で再スタートを切りました。そこが、一生この仕事で食べていくと腹を決めた瞬間でもありますね。そこから3年間勤めさせていただいたあと、「株式会社フレーム」として独立に至りました。

ー 株式会社フレームの社名の由来でもある「枠組み全体をデザインしていくような仕事がしたい」と考え始めたきっかけについてお聞かせください。

そうですね。会社として独立する前から、全体の構築やコンセプト作りに携われなければ、あまり僕がデザインをする意味はないなと思っていました。デザインにおいて重要なのは最終的なアウトプットではなく、それまでのプロセスだと考えているからです。

例えば名刺やチラシのデザインをしたとして、造形の美しさを褒めていただいたり、それによる集客効果があったとしても、その評価は一過性のものでしかない、制作物も結局消えていくものだと思っていて。

ただ消費されるだけの存在にならないためにも、ものづくりの上流に関わり、物事の全体に、本質的に寄与するような仕事がしたいとは常に考えていましたね。

ー 2020年に著者である「毎日ロゴ」を出版されていますね。この本には、石川さんが1年間毎日30分でロゴを作り、それをブログにアップし続けた結果が記されています。それゆえ感じた、ロゴデザインに必要な発想力と造形力を鍛えるための手法について書かれているとのことで、デザイナー・クリエイターをはじめ、それ以外の職種の方にも親しまれている一冊とお聞きしました。どのような経緯でブログにロゴをアップし始めたのですか?

今自分が持っているスキルで提供が可能で、物事の枠組み全体に寄与できる仕事はなんだろうと思ったとき、1番近かったのが「ロゴ」だったんです。

ロゴって、物事が生まれる・切り替わるスタート地点に作られることが多いですよね。そのスタートの時って、もしかしたら枠組みがまだできていないこともあるかもしれない。それなら、できるだけ上流から関わることができるのではないかと思って。

そこで毎日ロゴを作っている人がいたら、この人はロゴが得意なデザイナーなのかもしれないと勘違いしてくれる人も出てくるのではないかという仮説を立てました(笑)とりあえず1年間はやってみようと思ってブログをアップし始めたら、ありがたいことに、予想通りロゴ制作の依頼をくださる方がいらっしゃって。その結果、実績も積み重なり徐々に自分に「ロゴの人」という印象がついていったように思いますね。

フレームが大切にしているのは、時間が経っても色褪せない「夢」や「想い」

ー フレームでは、ブランディング、CI・VI計画、パッケージデザインなど、さまざまなデザインを展開されているとお聞きしましたが、、案件の入り口の8割程度がロゴであるとお聞きしました。ロゴ制作をするにあたって、具体的にどんな流れや期間でアウトプットまで辿り着くのですか?

事例によって変わってくるのですが、ロゴのみを作る場合でいうと、ヒアリングからご提案までは短くても1ヶ月程度はかかります。ご依頼をいただいたら、まず現場にお伺いしてヒアリング。その際、なるべく会社の中や製品も直接見せていただきます。それから会社に戻って、お客様の業態や競合他社との類似性などの調査を行いながら、やっと制作に入ります。

また弊社では、ご依頼に対し、社員全員でアイデアを出し合うんです。その中で出た、コンセプト自体が違うロゴを複数案、お客様に提出しています。

ー ヒアリングを行う上で、石川さん自身が一番聞きたいと思っているのはどんなことですか?

お客様がこの仕事・サービスを始めたきっかけやこだわり、ユーザーに届けたい想い、夢、野望などといった部分ですかね。答えのない問いであり、こう聞いたらこう返ってくるだろうなと想像することができない部分なので、ほとんど雑談をしているような感じです。ですが、あえてこういった話をする時間は長く取るようにしています。

なぜなら、僕が制作物に載せたいのはこの「想い」の部分だからです。

「想い」を具現化し、お客様が一番大事にしたい信念やこだわりを明確にすることで、お客様自身がお仕事をされるときや、サービスを提供される際の意識づくりにも貢献できるのではないかと考えています。

また、「想いを理解してくれた」と感じていただけることで、ビジネスを超えた、もう少し深い関係性づくりにも繋がっていると思っています。

ー 新潟県内を中心にさまざまなデザインに携わっている石川さんですが、これまでで印象に残っている企業様やブランドはありますか?

燕三条で長年ものづくりに携わってきた金属加工メーカーさんと、僕を含む複数人のクリエイターによるコラボチーム「燕三条キッチン研究所」の「4w1h」です。「燕三条キッチン研究所」は、メーカーさんからいただいた企業価値の向上をミッションとしたブランディングのご相談から実現したチームです。

当時、そのメーカーさんは自社で作った多くのキッチン用品を問屋に卸し、自社製品がさまざまな見せ方で、さまざまな値段で取引されているような状況でした。そこで、企業自体の価値を上げるためにはどうしたらいいか考えたとき、ものづくりへのこだわりを詰め込んだ「新ブランド」を立ち上げてはいかがでしょうかというご提案をさせていただきました。

その後、新ブランド立ち上げにあたって、初期段階からチームにプロダクトデザイナーとコピーライターをアサイン。検討のプロセスを全員が共通理解している状態でものづくりに入れたことはとてもよかったですね。みんなで半年くらいさまざまな議論を交わしたのち、「4w1h」という名前やロゴをご提案したら「そうそう、そういうこと!」と全員が口を揃えて言ってくれて。あの感覚は忘れられないですね。自分がやりたかったことは、こういうことなんだなと実感した瞬間でした。

今でも継続的に商品開発に関わらせていただいているのですが、メンバー全員が同じ方向を向いてプロジェクトに参加しており、とても心地の良いお仕事をさせていただいていますね。

   

2020年のグッドデザイン賞にも輝いた 4w1hのホットサンドメーカー「ホットサンドソロ」

デザインはアウトプットだけでない「より身近で広い意味を持つもの」

ー お客様やユーザーのために、より良いアウトプットを生み出したいと思っているデザイナーやクリエイターに対し、アドバイスをいただけますか?

僕は、デザインという作業を行うにあたってアウトプットには固執していませんし、僕よりも素敵なアウトプットを生み出すデザイナーは新潟にたくさんいると思っています。

ただ、1つ伝えたいこととしては、デザインを行う上で「お客様と目線を合わせること」は非常に大切だ、ということです。型にとらわれないデザインや奇抜なデザインは作ろうと思えばいくらでも作れるのですが、市場に対してマッチしていなければ意味がない。ですので、お客様と話をする時も、2歩3歩先ではなく、1.5歩先にいる存在を目指しています。こちらの専門領域における話であったとしても、お客様との共通言語を使いながら会話をすることを意識していますね。

あとは、1つの事象をいろいろな角度から見ることです。自分が見ている面だけでなく、別の面から見たら違う見え方になることも多いです。そういった複数の広い視点でデザインを考えられるとより良いアウトプットが生まれると思っています。

ー 会社の経営者として、 石川さんご自身が意識されていることはありますか?

デザイン会社を経営し、デザインを一生の仕事にしていきたいと考えている立場としては「デザインの市場を作ること」を意識しています。

今って一般の方からしたら、デザイナーは「特別な才能を持っている人」というイメージを持っている方も多いと思うんです。また、「自分なんかが頼めない」と思っている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、街に出たりお店に入れば、イベントのポスターやお菓子のパッケージなど、デザインが施されたもので溢れている。なので、僕はデザインは本来、もっと身近なものであるべきだと思っています。そのギャップを埋めたいと思い、フレームの理念は、「デザインを身近に」です。デザイナーが、子どもの将来の夢として上位に挙がるような、身近な職業になればいいなと。

ただ、デザインはアウトプットよりもそこに至るまでのプロセスが大事だと思っているので、それを理解・共有できるような方々を新潟に、ひいては世の中全体に増やしていきたいという思いはありますね。そのために行っているのが新事業のクリエイティブ・コンサルや書籍の出版、講演活動です。最近では小学校や中学校でもデザインに関する話をしに行っているんですよ。「話を聞きたいです」と言ってくださる方がいれば、どんな現場でもなるべくお伺いするようにしていますので、どうぞお気軽にお声がけくださいね。

ー 最後に、株式会社フレームとしての今後の展望などをお聞かせください。

最近、オフィスを新潟市中央区から日和山浜のすぐ近くに移転しました。海が近く、以前より四季を感じることができる環境になりましたね。

オフィスは2階に、1階はカフェとし、デザインをもっと身近に感じていただくためのイベントや交流会を行いたいなとも考えています。デザイナーやクリエイターだけに留まらず、デザインに携わったことのない一般の方も集まれる場にできれば良いですね。

ただ良いものを作るだけでは売れない時代になった現代社会において、ブランディング、CI・VIなど「価値づくり」という意味のデザインの重要性はますます高まっているように感じます。ただ、新潟にはその部分を担えるクリエイターがまだまだ少ない。そういった現状を前に進めるべく、僕の活動も、その一助を担えると嬉しいですね。 

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